まだ起こらないことを心配する癖を手放す具体的なステップ
日々の生活の中で、ふと頭の中に「もしも、こんなことが起きたらどうしよう」という考えが浮かんできて、心がざわつくことはないでしょうか。まだ起こってもいない未来の出来事や、可能性の低いネガティブな状況を想像してしまい、不安な気持ちに囚われてしまう。子育てや家庭のこと、仕事やご自身の将来のことなど、様々な場面でこのような「もしも」の心配が心を支配し、今を楽しむ余裕を奪ってしまうこともあるかもしれません。
この「もしも」の心配は、私たちの心を疲れさせ、前に進むエネルギーを奪ってしまうことがあります。しかし、少しの意識と具体的なステップによって、この心配の癖を和らげ、もっと穏やかに日々を過ごすことができるようになります。
ここでは、まだ起こらない未来の心配を手放し、心を落ち着けるための具体的なステップをご紹介します。
なぜ、まだ起こらないことを心配してしまうのか
人間は、危険を回避するために未来を予測する能力を持っています。これは私たちが安全に生きるために必要な機能です。しかし、この予測機能が過剰に働きすぎると、まだ起こってもいないことに対して必要以上に不安を感じてしまうことがあります。特に、将来の不確実性や、自分でコントロールできない状況に直面した時に、「もしも」という形で最悪のシナリオを考えてしまいがちです。
この「もしも」思考は、頭の中で堂々巡りになりやすく、具体的な解決策が見つかりにくいため、漠然とした不安を増幅させてしまう傾向があります。そして、未来への心配に意識が向きすぎることで、私たちが今、この瞬間にできることや、現実の状況を見落としてしまうことにつながります。
「もしも」の心配を手放すための具体的なステップ
未来の心配のループから抜け出し、心を落ち着けるためには、自分の思考パターンに気づき、意識的に向き合うことが大切です。以下のステップを試してみてください。
ステップ1:心配していることを具体的に書き出す
頭の中で漠然としている「もしも」の心配を、紙やノートに書き出してみましょう。「もしも、子どもが学校で〜になったら」「もしも、パートの収入が減ったら」「もしも、親が病気になったら」など、具体的な言葉にしてみてください。
書き出すことで、頭の中が整理され、何に不安を感じているのかが明確になります。また、頭の中だけで考えているよりも、客観的に自分の心配事を眺めることができるようになります。
ステップ2:「起こる確率」と「自分でコントロールできるか」を見極める
書き出した心配事について、以下の2つの点を考えてみましょう。
- それは実際に起こる可能性がどのくらいあるか? (非常に低い、低い、普通、高い)
- もし起こったとして、自分で何かコントロールしたり、対処したりできる部分はあるか? (全くできない、少しできる、かなりできる)
可能性が極めて低いことや、自分がどう頑張ってもコントロールできないことに対して、過度にエネルギーを使う必要はありません。その心配は一度横に置く練習をしてみましょう。
ステップ3:「もしも」の次に「ではどうするか?」を考える(対処可能な場合)
ステップ2で、もしそれが起こる可能性がある程度あり、かつ自分で少しでもコントロールしたり、対処したりできる部分があると判断した場合、次に「では、もしそれが起こったら、自分はどうするだろうか?」と具体的な対応策を考えてみます。
例えば、「もしも、パートの収入が減ったら」という心配がある場合、「まずは家計の見直しをする」「夫と相談する」「別の仕事を探す情報を集める」など、具体的な行動をいくつか考えて書き出しておきます。
もちろん、実際にそれが起こるかどうかは分かりませんが、具体的な対処法を考えておくことで、「もしも」への漠然とした不安が和らぎ、「もしそうなったら、こうしよう」という安心感につながります。
ステップ4:今、この瞬間に意識を戻す練習をする
未来の心配に囚われそうになったら、意識を意図的に「今」に戻す練習をします。これは「マインドフルネス」の考え方を取り入れた簡単な方法です。
- 呼吸に意識を向ける: 数回、ゆっくりと深呼吸をし、吸う息、吐く息の感覚に意識を集中します。
- 五感を使う: 今、自分が見ているもの、聞こえている音、触れているもの、嗅いでいる匂い、味わっているものに意識を向けます。「今、机の上に見えるものはペンとノートだ」「外から車の音が聞こえる」「ソファの生地が指に触れている」など、ありのままの感覚に集中することで、頭の中の心配事から注意をそらすことができます。
これは数分でも、日常のちょっとした隙間時間(信号待ち、休憩時間など)に簡単に行うことができます。
ステップ5:心配事を「手放す儀式」をする
ステップ1で書き出した心配事の中で、ステップ2の見極めで「可能性が低い」「コントロールできない」と判断したものについては、意識的に手放す練習をします。
例えば、書き出した紙を丸めてゴミ箱に捨てる、シュレッダーにかけるなど、形として心配事を「手放す」象徴的な行動をとってみるのです。これは、頭の中の心配事を物理的に「片付ける」ことになり、心の区切りをつける助けとなります。
実践のヒント
これらのステップは、一度やれば終わりというものではありません。心配性はすぐに消えるものではなく、練習によって少しずつ和らげていくものです。
- 完璧を目指さない: 全ての心配事を手放そうと気負う必要はありません。まずは一つか二つの心配事から試してみましょう。
- 自分を責めない: 心配してしまう自分を責めないでください。心配することは、誰にでもある自然な感情です。大切なのは、その感情にどう対処するかを知っていることです。
- 日常の隙間に取り入れる: ステップ4のような「今に意識を戻す練習」は、忙しい日常の中でも数分あれば実践できます。小さな習慣として取り入れてみましょう。
まとめ
未来の「もしも」に対する心配は、時に私たちを立ち止まらせ、心を重くします。しかし、その心配事を具体的に見つめ、起こる可能性や対処の可否を見極め、今に意識を戻す練習をすることで、少しずつその重さを手放していくことができます。
まだ起こらない未来に心を奪われるのではなく、今、この瞬間に目を向け、自分にできることに意識を集中すること。それは、前向きに日々を過ごすための大切な一歩です。焦る必要はありません。あなた自身のペースで、今日から一つずつ、できることから試してみてください。あなたの心が、少しでも穏やかになることを願っています。